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環境科学研究科のシンボル的研究施設として設計したエコラボは、先端的研究も行われることを前提として、フレキシビリティを確保した上で、現代的でシンプル・軽快な空間となるようデザインしています。また、木造が本来もつ「暖かさ」や「柔らかさ」といった長所を活かしながらも、断熱性能や気密性能といった機能性も満足する建物として設計しました。
研究者や学生だけではなく一般市民にも開かれた建物として
「内外に開かれた空間」を基本コンセプトとしています。
内外空間がゆるやかに連続した構成
● 1 階: 南側と東西面はガラス面として、外部に対して開放的な雰囲気となっています。
● 2 階: 芝生の上に「格子スクリーン」が浮いているイメージで、柔らかな表情を演出しています。
● PH 階: 採光と換気を兼ねた天窓で、夜間は行灯のように光るシンボルとなります。
閉鎖的研究施設から開放的な研究施設へ吹抜けやガラス面を通して、水平・垂直方向共に見通しがよく、互いの気配が感じられる空間としています。
木構造が本来もっている力強さや柔らかさを活かすため、梁や野地板の構造部材はそのままシンプルに表し、
緊張感と落ち着きのある空間となるよう設計しました。
1階エントランスホールから上部天窓までの吹抜け(=風の道)を利用して、建物内外の温度差による「重力換気」と風の圧力差による「風力換気」を自動で行うシステムとしています。夏期と中間期は建物内の熱を天窓の「自動開閉換気窓」から排出し、電気エネルギーはほとんど使用しません。一方、冬期は上部の暖かい空気を、天窓の「エアスイングファン」から1階まで吹き降ろし、エントランスホールを暖めます。
エントランスホール廻りは、天窓からの採光によって昼間の照明点灯は殆ど必要ありませんし、最新の高効率照明器具(LED 照明など)の使用で、消費電力を抑えることが可能となっています。
木材の調湿機能を活用するため、壁や天井は杉材の仕上げを基本としていますが、さらに調湿機能のあるヌリカラット(INAX)を壁に使用して室内環境の安定をはかっています。
身近な地域の資源を有効的に活用することで、間伐などによる手入れした山や里山の保全につながり、さらに環境を守る森を存続させることに繋がっていきます。今回の設計は構造材・骨組みから仕上げに至るまで、東北大学農学研究科が管理する、川渡農場の杉間伐材を主とした地産地消による身近な地域の材料と造り手を活用した計画とし、普段地場の職人が扱い慣れている、木造の伝統的仕口継手工法を採用し、地域経済の活性化に少しでも貢献できる様に考えました。